地元で開催された展示を見てきました
12月に入り、今年もあとわずか、、、というところでしょうか。
暖冬らしいのですが、朝晩は普通に寒いですね。
さて、過日にはなりますが、先日島根に弾丸帰省してきました。
なにか不幸があったわけではなく、地元の島根県立石見美術館で開催されている企画展「建築家・内藤廣 BuildとUnbuild」を見るために行ってきました。
※もう会期は終了しています。
最も身近な建築家のひとり
今はまちづくりや社会課題解決のお手伝いを仕事としてやっていますが、私は元々大学では建築を勉強していました。
実家が製材所であることや、近所に職人さんたちがいたこともあって、漠然と建築を学びたいと思って、大学進学しているという背景があります。
そんな受験中に着工し、卒業前くらいに完成していたのが島根県立石見美術館が入っている島根県芸術文化センター「グラントワ」。
どうやら建築家が関わっているらしいということは聞いていて、のちにその人物が内藤さんであることを知りました。
そこから、内藤さんに興味を持ち(理解していたかどうかは置いておいて)彼の著書を読み漁った大学時代でした。
大学時代から今も、実家に帰省するたびに立ち寄っては、空間を堪能させてもらい、建築家の息吹を感じているので、私にとっては、内藤さんは最も身近な建築家の一人といえるかなと思っています。勝手に。
赤鬼と青鬼が教えてくれる展示
企画展は、内藤さんのこれまでを振り返る大規模な展示会。
全国でもなかなか見れないボリュームの展示らしく、駐車場にも県外ナンバーが多く関心の高さが伺えました。
実際の展示は、内藤さんのこれまでの仕事を「実際できたもの」と「できなかったもの」に分けて展示。
図面や模型、映像など、かなりの量がありました。
(時間が足りなかったので、図集を購入。)
加えて、青鬼と赤鬼というキャラクターがそれらを解説。
ざっくり青鬼は理性、赤鬼は感性の役割を持って、彼らのやり取りで当時のプロジェクトについて窺い知ることができました。
個人的な感想ですが、内藤さんの建築に対する向き合い方は素直で自然だなと思っています。
クライアント、土地、素材、構造、デザインなど、見ているとしっくりくるし、違和感が少ない。
かといって、個性がある感じを学生時代から感じていて、それがより解像度高くわかる内容で、大変胸熱な展示でした。
公共施設建設で考えること
石州瓦で覆われたグラントワを初めて見た時に感じたことは、
「ここにいることに誇りを持ってください」
と言われたような感覚でした。
勝手に「地元にはなにもない」と卑下して育ってきた身としては、背中を押してもらえる気分で、「今ではグラントワがある」と胸をはっていえる。
建築がそのような力を持っているのだなと、感じていることもグラントワが好きな理由の一つ。
ちなみに着工当時、在学していた高校の1年生たちが文化祭で研究テーマを発表。
そのテーマが「グラントワの建設について」。
結論からすると「グラントワは赤字箱」というもので、人口5万人規模の街に見合っていない施設規模であることを指摘していたのを今でも覚えています。
彼らの結論はおそらく正しいけれど、経済的な視点からでしか見れていないなぁと、今なら思います。
昨今の公共施設建設をめぐっては、お金の問題が付きまといます。
「税金でそれを建てるべきなのか?」
もちろんそれは重要な視点で考えるべきことだと思います。
一方で「それが建ったらどんないいことが起きるのか?」まで考えることも重要。
実際私にとってグラントワは郷土愛を象徴する存在の一つになっていますし、そこで行われるコンテンツで県外から人がくるきっかけになっています。
そこの中だけで完結するのではなく、その外にどんなことが起きるかも想像することが大事なんじゃないかなと思っています。
今回の帰省と展示で、そんなことを考えながら、鹿児島に帰ってきました。
鹿児島にもそういう建築家が出てきてくれるといいなぁ。笑